そろばんの練習で○と×はつきものですが、実は単純に○と×の二つにわけられるものではないという話をします。
○には自信満々で計算した結果の根拠のある○となんとなく計算した結果の根拠のない○があります。×にも同様に、自信満々で取り組んだ結果の、間違えた根拠のある×と、なんとなく無意識で取り組んだ結果の根拠のない×とがあります。
○と×は正反対の結果を表しますが、指導する立場から見ると根拠のない○と根拠のない×はまったく同じ結果だと判断します。根拠がないということは正解にも間違いにも再現性がないということであって、それは実力とはいえないのです。
練習時における○と×に順位をつけるとすれば、最も良いものは「根拠のある○」であり、続いて「根拠のある×」となります。「根拠のない○」と「根拠のない×」には意味がありません。
「根拠のある○」にはより洗練された指の運びや速度アップなどの技術面における指導が考えられ、「根拠のある×」には間違いを再現して、正しい方法と比較させる指導が有効となります。
対して「根拠のない○と×」には、精神面でのアプローチから始めます。無意識で取り組もうとする気持ちを改めさせて意識して取り組む気持ちになるように仕向けていかなければなりません。
加減乗除の計算方法を覚える段階での間違いやつまずきは、「考えずにやってしまう」ことが原因のほとんどを占めています。
考えてやることを意識すれば、考えてもわからないときはその時点で指が止まります。この「指が止まる」というのがわからないときの正しい反応です。
ところが、考えずにやってしまうと、わかっていないことに無頓着になってしまって、間違いがどんどん上書きされてしまいます。こうなると改善には相当な時間がかかる場合もでてきます。
そうならないために心がけておくべき大切な取り組みは、「考える」ことを日常から徹底的に意識することです。不正解のときはもとより、正解であってもときにその理由を尋ねることがありますが、これは「考える」ことの重要性を生徒に問うていることに他なりません。
どうぞ生徒の皆さんには確信を持ってどんどん間違えてもらいたいと思います。間違いの中には伸びるための「あっそうか体験」ができる要素がたくさん詰まっていますから、失敗して、間違えて、その原因を知り対処を考えるという作業を繰り返して欲しいと思います。
変な言い方ですが、そろばん教室は安心して失敗できる場です。そして間違いの中にある成長の素に生徒の皆さんが気がつく場です。さらには成長の素を使って実際に成長する場でもあります。
思索の秋です。「考える」ことの重要性について、計算方法の習得時にスポットを当てて書いてみました。今年は秋があったのかという議論はさておいて、です。