○6月25日実施の珠算能力検定1~3級や暗算検定は満点に対して8割以上の得点で合格します。
試験における関心はやはりなんといっても「合否」です。ギリギリであっても合格はまぎれもないものですし、おしくもあと1問題というところで不合格だとしても、不合格はやはり不合格です。たった5点の差で結果においては雲泥の差となってしまいます。
しかしながら「実力を伸ばす」という一点に絞って考えるならば、私たち指導者の注意は実は合否よりも「失点」に向かわなければなりません。
どんな間違いがどういった場面で現れてくるのか。以前よりも改善されているのか。間違いの種類が減少しているのか横ばいのままなのか。
試験は、終わった瞬間から課題がわんさかと沸いてくるのです。
○さて、間違いには、再現性のあるものと再現性のないものとがあります。
再現性のある間違いとは、間違えの理由が明確なものです。そろばんを使う計算では「思い込みによる珠の操作ミス」「桁数ミス」「問題の見間違い」などが挙げられます。再現性のない間違いとは、速度を上げて計算したことによって他の珠を触ってしまってのミスなどがあります。
あんざんでの間違いには上の例に加えて「写像ブレ」が加わります。頭でそろばんの珠の動きを想像するのがあんざんですが、たとえば「2273」のようなとなりの珠が似ているようなものが計算途中に出てくると区別がつきにくくなってしまって、1違いや5違いがよく発生します。速度を上げて計算すると確認作業をする時間が無くなってしまってこの間違いが多くなる傾向があります。
3桁の数字を10個たし引きするような問題だと珠の動きは100回を超えてきます。100回のうち1回でも写像ブレが発生すると誤答になりますから正解を得るのはかなり大変な作業になります。
再現性のない間違いはそれほど気にする必要はありませんが、再現性のある間違いとあんざんの写像ブレは間違い直しをきちんとしなければなりません。
その際に大切なことは、間違った答えを正しい答えに直すという作業でとどまらず、間違いの意味を理解して次の間違いを防ぐところまで意識を高め、考察することです。この作業があって初めて自発的な成長が見られるようになります。間違いには成長の種が一杯詰まっているのです。
○点数報告の時に、答案を確認する場合とそうでない場合とがあります。合格点が出ているか否かという基準で分けているのではなく、過去の平均点や最高点とその日に報告された得点から今まで積み重ねてきた誤算がどの程度改善しているかを判断して確認の必要性が決まります。
答案を差し出す際のちょっとした仕草、点数報告の声の大小やハリから必要性の判断をすることもあります。
自分自身で間違いの意味に気がつき、次からの練習に生かせるだけの成長が見られる生徒。次につなげる意識と工夫を持つように成長を待つ生徒。そこに至る前の段階で間違いの理由が自分ではまだ見つけられず援助や指導が必要な生徒。
さまざまな段階の生徒がいますが、成長過程に合わせて対応は異なります。
能力が十分ありながらも意識がそこについてこない生徒には別のアプローチを試みることもあれば、注意をすることもあります。
いま目の前にある課題を改善するだけならば、これはどちらかといえばたやすいことで、できるまでとことん教え込み、時には授業を延長してでも取り組ませればできるようになります。風邪をひけば、症状を抑える薬を処方するようなものでしょうか。
これはこれで必要なことですが、しかしもっと大切なことは、風邪を引かない体を造ることです。間違いそうになったり、よく引っかかる落とし穴の直前にさしかかったらきちんと反応するセンサーを身につけることです。言われるがままに操作をしているだけでは、このセンサーを磨くことはできません。
急がば回れ、とはよくぞいったものです。
指導の中でどれだけの『気づき』を生徒の皆さんが獲得できるか。
生徒は日々成長しています。昨日までの『気づき』が今日はすでに古くなり、次の成長には新たな『気づき』が必要です。追いかけて、追いつきそうになったら、またその先にゴールが移動していく。生徒の成長に合わせて私たちの指導にもゴールはありません。
○3か月間行ってきました算数教室では、学校でいま習っているところは一旦さておき、文章題を解くにあたって必要な基本的事項の学習と、それらを使って自力で解に向かう具体的な道筋造りの経験を積むことに取り組んできました。解き方を教えればすぐに済む問題ばかりですが、それだと解法を忘れてしまうと手も足も出なくなってしまいます。
頭に入っている知識を最大限発揮するために必要な取り組む意欲の増進。
教室ではありとあらゆる場面を通じて、この力を伸ばすべく取り組んでいます。
誰かに何かを教えてもらう「学ぶ時間」よりも自分から学び取り解決をしていかなければならない時間のほうが何倍も長いのです。