授業が終わると、全員のプリントを回収して授業後または翌日に答案のチェックを行っています。
答案には、技術の伸び、間違い方、答案記入方法、指導の浸透度、計算題数、数字の丁寧さ、書き直しの数、集中度合いなどが記録されています。答案は生徒の技術面・精神面がとてもよくわかる情報の宝庫です。
間違えている問題には必ず目を通します。間違いを繰り返す可能性が高い場合や理解が完全でないことから起こる間違い、指摘を繰り返している間違いなどは必ず次の出席時に指導を行います。
答案を見続けていますと、点数があまり上がってこないものの、間違いがどんどん改善されていく様子がわかります。
たとえばそろばん1級のみとり算。10桁の数字を10個たしたり引いたりする問題で数字は100個あります。100個の数字を計算するためにそろばんの珠を操作する指の動きは200から300にもなります。1分でこれだけの作業を行い、しかも一箇所のミスも許されないのがそろばんです。部分点がありませんから、一箇所間違えても十箇所間違えてもバツに変わりはありません。しかしながら、一箇所の間違いは十箇所の間違いよりも集中力・技術力は遙かに上回っている答案になります。
練習を重ねていくうちに、間違い箇所が減っていきます。それでもまだ正解とはならないため、生徒本人には成就感も達成感もそれほど感じることができない状態ですが、確実に技術も精神力も上がっていっていますから、私たちはその点を評価して生徒に伝えます。
目に見える点数だけで判断できないところがそろばんの面白さであり難しさでもあります。
満点の答案であっても、課題の克服が進んでいない場合は評価としての満点を与えることにはなりません。逆に、たとえ点数が低くてもチャレンジしている気持ちがあり、課題の克服が少しずつでも進んでいる答案はその時点での評価は満点になります。
習い始めた瞬間から、練習を通じて生徒の皆さんはちょっとした成就感と挫折感を日常的に味わいます。この繰り返しが情緒をはぐくみ、健全な成長を促すものと信じて指導に当たっています。