塾長ブログ

2023.09.06

人間力を高める(塾報6月号より)

○6月25日実施の珠算能力検定1~3級や暗算検定は満点に対して8割以上の得点で合格します。

 試験における関心はやはりなんといっても「合否」です。ギリギリであっても合格はまぎれもないものですし、おしくもあと1問題というところで不合格だとしても、不合格はやはり不合格です。たった5点の差で結果においては雲泥の差となってしまいます。
 しかしながら「実力を伸ばす」という一点に絞って考えるならば、私たち指導者の注意は実は合否よりも「失点」に向かわなければなりません。
 どんな間違いがどういった場面で現れてくるのか。以前よりも改善されているのか。間違いの種類が減少しているのか横ばいのままなのか。
 試験は、終わった瞬間から課題がわんさかと沸いてくるのです。
○さて、間違いには、再現性のあるものと再現性のないものとがあります。
 再現性のある間違いとは、間違えの理由が明確なものです。そろばんを使う計算では「思い込みによる珠の操作ミス」「桁数ミス」「問題の見間違い」などが挙げられます。再現性のない間違いとは、速度を上げて計算したことによって他の珠を触ってしまってのミスなどがあります。
 あんざんでの間違いには上の例に加えて「写像ブレ」が加わります。頭でそろばんの珠の動きを想像するのがあんざんですが、たとえば「2273」のようなとなりの珠が似ているようなものが計算途中に出てくると区別がつきにくくなってしまって、1違いや5違いがよく発生します。速度を上げて計算すると確認作業をする時間が無くなってしまってこの間違いが多くなる傾向があります。
 3桁の数字を10個たし引きするような問題だと珠の動きは100回を超えてきます。100回のうち1回でも写像ブレが発生すると誤答になりますから正解を得るのはかなり大変な作業になります。
 再現性のない間違いはそれほど気にする必要はありませんが、再現性のある間違いとあんざんの写像ブレは間違い直しをきちんとしなければなりません。
 その際に大切なことは、間違った答えを正しい答えに直すという作業でとどまらず、間違いの意味を理解して次の間違いを防ぐところまで意識を高め、考察することです。この作業があって初めて自発的な成長が見られるようになります。間違いには成長の種が一杯詰まっているのです。
○点数報告の時に、答案を確認する場合とそうでない場合とがあります。合格点が出ているか否かという基準で分けているのではなく、過去の平均点や最高点とその日に報告された得点から今まで積み重ねてきた誤算がどの程度改善しているかを判断して確認の必要性が決まります。
 答案を差し出す際のちょっとした仕草、点数報告の声の大小やハリから必要性の判断をすることもあります。
 自分自身で間違いの意味に気がつき、次からの練習に生かせるだけの成長が見られる生徒。次につなげる意識と工夫を持つように成長を待つ生徒。そこに至る前の段階で間違いの理由が自分ではまだ見つけられず援助や指導が必要な生徒。
 さまざまな段階の生徒がいますが、成長過程に合わせて対応は異なります。
 能力が十分ありながらも意識がそこについてこない生徒には別のアプローチを試みることもあれば、注意をすることもあります。
 いま目の前にある課題を改善するだけならば、これはどちらかといえばたやすいことで、できるまでとことん教え込み、時には授業を延長してでも取り組ませればできるようになります。風邪をひけば、症状を抑える薬を処方するようなものでしょうか。
 これはこれで必要なことですが、しかしもっと大切なことは、風邪を引かない体を造ることです。間違いそうになったり、よく引っかかる落とし穴の直前にさしかかったらきちんと反応するセンサーを身につけることです。言われるがままに操作をしているだけでは、このセンサーを磨くことはできません。
 急がば回れ、とはよくぞいったものです。
 指導の中でどれだけの『気づき』を生徒の皆さんが獲得できるか。
 生徒は日々成長しています。昨日までの『気づき』が今日はすでに古くなり、次の成長には新たな『気づき』が必要です。追いかけて、追いつきそうになったら、またその先にゴールが移動していく。生徒の成長に合わせて私たちの指導にもゴールはありません。
○3か月間行ってきました算数教室では、学校でいま習っているところは一旦さておき、文章題を解くにあたって必要な基本的事項の学習と、それらを使って自力で解に向かう具体的な道筋造りの経験を積むことに取り組んできました。解き方を教えればすぐに済む問題ばかりですが、それだと解法を忘れてしまうと手も足も出なくなってしまいます。
 頭に入っている知識を最大限発揮するために必要な取り組む意欲の増進。
 教室ではありとあらゆる場面を通じて、この力を伸ばすべく取り組んでいます。
 誰かに何かを教えてもらう「学ぶ時間」よりも自分から学び取り解決をしていかなければならない時間のほうが何倍も長いのです。

2023.09.06

みらい検定本格実施(塾報6月号より)

 みらい検定は8月にそろばん、9月にあんざんの第一回検定試験が実施されます。申込書は7月中旬に配布します。

 みらい検定は従来の検定システムをベースに、より早期の上達を目指して考案された検定試験です。星の郷教室では今後従来からの検定とみらい検定を併用していく予定です。
 みらい検定では、レベル1で10級~7級、レベル2は6級~4級、レベル3は3級~1級を認定します。かけ算・わり算・みとり算の3種目をあわせて計時し、合計点数によって合格級が決定されますが、各種目に合格最低点が設定されているため、『作戦』を立てる必要があります。どの種目にどれだけ時間をかけるか、目標級をクリアするために何題を何分で処理するかといったプランは従来検定にはなかった取り組みで、ここがみらい検定の魅力でもあります。
 なお歴史と伝統がある日本商工会議所主催珠算1~3級能力検定、大阪珠算協会主催暗算検定も従来通り進めていきますので、実力と希望に合わせて柔軟な対応をしていきます。
(5月実施のみらい検定プレテストの結果は教室に表示をしております)

2023.09.06

みらい検定(塾報4月号より)

  今年度より新検定「珠算式暗算能力到達度検定(みらい検定)」が始まり、プレテストとして5月にそろばん、6月にあんざんの試験が行われます。プレテストは証書は発行されませんが無料で受験できます。

 みらい検定は従来からある1級までの検定試験とは合格システムが異なり、点数で合格級が決まる試験です。問題の種類はそろばん・あんざんともに3種類。レベル1では10級~7級、レベル2では6級~4級、レベル3では3級~1級が認定されます。かけ(暗)、わり(暗)算、みとり(暗)算それぞれが基準点を超え、かつ合計点が基準点を超えていれば「○級合格」、種目の基準点は超えていないものの3種目の合計点が基準点を超えていれば「準○級合格」となります。
 星の郷教室では4年前からみらい検定の問題を練習メニューに採り入れて有効性を確かめてきましたが、能力検定3級受験者の平均学習期間が採用後に何と1年も短縮され、その傾向は変わることがないことがわかりました。また同様の効果は他の教室においても顕著に表れていることから、一般社団法人大阪珠算協会は公式試験として採用することが決定したものです。
 今後は従来から行っている暗算検定の練習を通じて技術を高めることもできますし、みらい検定で暗算力をのばすこともできます。またそろばんの試験としては、「みらい検定→能力検定→段位試験」のルートと、「みらい検定→段位試験」というルートができました。
 5月のそろばんプレテスト、6月のあんざんプレテストは段位練習生以外は全員受験できますので、できるだけ受けましょう。ただし、グランプリ大阪大会出場者、6月3日の暗算検定受験者、6月25日の能力検定1~3級受験者はその時の練習内容や状況によって受験するかどうかを決定します。5月そろばんプレテストの日程は5月22日から27日です。27日に最も近い出席日の授業時間中に受験しましょう。申し込みは必要ありません。受験週間には毎時間、開始前に受験希望者を
確認します。

2023.09.05

人は間違えて当然(塾報2月号より)

○書いて覚える
 私が小中学生の頃、漢字は「とにかく書いて覚えよ」と学校の先生に教わりました。漢字練習帳に一つの漢字を10回書くという宿題が連日あって、課題をこなすためには理屈も何も考えずただひたすら書くことに目的と意識が集中していました。それでも反復練習の威力は結構あるのかして、必要な漢字はクラスの多くの生徒が覚えていったのでしょう。
 クラスメイトのAは、「旧」という漢字を10回書く宿題で、まず定規をもってきてマス目の左に「|」を続けて10マス書き、続いてマス目の中央に「|」を10マス、さらに右端に「|」を10マス、次にノートを横長に向きを変えて短めの「|」を一マスにつき3本書いて誰よりも早く仕上げて得意になっていました。下手な脅迫状のできあがりです。
 「10回書く」ことの意味を10回という回数に置くとAのようなことをする人間が出てきます。「覚えるまで書く」のが本来の目的なのでしょうが、一斉に指示を出すには全員に伝わるようなわかりやすさも重要なことから、10回という指定があったのでしょう。
 英単語も同様に「書いて覚える」ことを推奨する指導が多いようです。
○いろいろなタイプ
 では「かけ算九九」はどうでしょうか。また古典の名文の暗記はどうでしょう。
 この2つは書くことに最終目標があるわけではないので、「書いて覚える」よりも口に出して音で覚えたり意味で覚えたりする方法が多くとられています。
 被疑者の容姿を覚えて犯人逮捕に結びつける「見当たり捜査」も犯人の顔を描いて覚えるわけではないと思います。
 自転車の乗り方や自動車の運転、そろばんの計算も「何回も文字に書いて覚える」ものではありません。赤ん坊が色々なものを吸収するときに書いて覚えるのも見たことがありません。
 私たちは何かを覚えるために目的に合った方法をあまり意識することもなく区別して採用していますが、生徒の皆さんに教室で指導するときには少しばかり意識しなければならないポイントがあります。それは、どの感覚が強いかという特性を考慮して指導に当たることです。
 人間には視覚領域が優れているタイプ、聴覚領域が優れているタイプ、体感覚が優れているタイプの3つほどのタイプがあって、それぞれが理屈で覚えるタイプと理屈抜きで覚えるタイプに分かれています。また2つ以上の領域が覚える対象により補完的に作用しあって、効果を発揮する場合もあります。そこに年齢や発達による違い、モチベーションの濃淡も加わってきます。
 連合艦隊司令長官・山本五十六の言葉「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」には、視覚・聴覚・体感覚のすべてを網羅した指導とコーチングの要諦が見事にまとめられていてまさに至言です。
○多様性の尊重
 「書いて覚えよ」と指示する指導者は、自身がそうして覚えてきてうまくいったというほどのことであって、書くよりも目で見て形から入る方が向いている人もいれば、耳から入る情報のほうが理解が早いという人もいます。要するに、人はタイプがバラバラで、だからこそおもしろいのです。人は試行錯誤を繰り返す中で、特性に応じた学習法を自分自身で見つけ出していきます。
 そろばん教室では「視覚に訴えるか聴覚に働きかけるか、あるいは回数をこなして感覚を身につけていくか」を生徒との日々の関わりの中で私たちは一人ひとりに応じた指導方法を探っています。
○個別対応
 指導方法・指導レベルは完全な個別対応です。たとえば5の合成を利用する「2+3」の指導を考えても、言葉や図を示しての具体的な提示をともなう指導をするか既習事項を示してからの示唆にとどめるかはそれまでの生徒の進み方によって異なります。また指導をするにしても、その際に採用する説明方法や言葉は多種類あり、説明にかける時間も生徒によって区別します。少しだけ説明して生徒の反応を待ち、おそるおそるでも正しく指が動き始めるであろう感触を持てた時には、そこで説明を打ち切る場合もあります。
○経験を積む
 カリキュラムはあるものの、進度に期限を定めていない点が学校とそろばん教室との大きな違いです。ですから猛烈な早さで進む生徒がいるかと思えば、遅々として進まない生徒もいます。しかし、進みの遅い生徒はいつまでも遅いままではありません。強烈に伸びたいという意欲を持っていますが、その意欲をうまく表出することができなかったり、伸びたい意欲を打ち消してしまうほどのマイナスイメージをもっていたり、理解しているにもかかわらず自信のなさが意欲にふたをしてしまっている場合に進度が停滞気味になりますが、ある日突然パッと霧が晴れたように進み出すことを誰もが経験します。霧の濃さや霧の晴れ方に程度の差はありますが、その差は実はあまり重要ではなくて、大切なのは「霧が晴れた」という経験が蓄積されていくことです。
 何かに行き詰まって物事が進まず壁にぶち当たったとき、この「霧が晴れたように物事の道筋が見えた」という経験の多寡は生き抜く上でおそらくかなり重要なことだと思います。
 視覚・聴覚・体感覚。3つの感覚のうち、分野に応じて最も適している感覚を自分自身で知り、磨いていくことは、すなわち伸びる方法を自分で獲得していくことに他なりません。
 そろばんの練習を通じて生徒の皆さんは「伸び方・学び方」を身につけていって下さい。
 ご家庭でも子育てでうまくいかないとき、目・耳・体感覚へのアプローチの仕方を変えてみるのも有効ですよ。

 

2023.02.19

間違い直しの意義(塾報1月号より)

 現在、2月12日の検定試験に向けて84名の受験生が、それぞれの時間が許す範囲で合格・昇段に向けて熱心に取り組んでいます。教室でも特別練習時間を設定したり、間違い直しが終わるまで練習時間の延長を推奨したりして対応しています。
試験は得点で合否・昇段が決定されますから、はじめは合否、次に点数に意識が向きます。練習でも合格点が出ない間は最高点の更新を目指して取り組み、徐々に合格点に近づけていきます。
練習時における合格や高得点は自信につながりますからそれらに一喜一憂することは当然のことですが、指導側はそんな生徒を尻目にひたすら指導すべき点を探します。
バツにはバツになる理由があります。
間違えの内容を指摘したあと、原因を考えるように指示することもありますし、原因を教える場合もあります。そして、同様の間違いを防ぐために必要な技術や意識の持ち方を確認した後、練習で実現できるかどうかを試していきます。
間違いそうな場面にさしかかったときに間違いを未然に防いだり、そもそも間違わないように調整しながら課題をこなす能力を身につけることが目標です。これはそろばんに限らず、勉強や仕事においても必要な能力ですが、一朝一夕で身につくものではありません。間違い直しをしていく中で少しずつ少しずつ備わっていく能力です。
正解や点数は今までの成果を表し、間違いには将来の成功を約束するヒントが含まれています。
伸びる人は、間違いを恐れず、間違いから目を背けず、間違いから多くの教訓を学び取る人です。
間違い直しは、単に間違った答えを正しいものへと変える作業ではなく、同じ間違いを防ぐための工夫を考察することまでも含めてのものです。精神力を必要とする地道なものですが人としての総合力を高めていきます。

ACCESS{アクセス}

教室名 星の郷総合教室
所在地 〒576-0022
大阪府交野市藤が尾4-6-10
電車の場合 JR片町線星田駅、または、京阪電車河内森駅から徒歩15分
自動車の場合 第二京阪道路交野南インターチェンジから5分、交野北インターチェンジから10分
国道168号線西川原交差点を西に入り、1分